サービス化したERPパッケージは、標準化された技術であるWebサービスを介して他のサービスと連携することができる。連携のためのインタフェース用アドオン・ソフトが不要になる可能性も出てきた。メインフレーム上で動作するアプリケーションであれ、他社製のパッケージ・ソフトであれ、Webサービスを介せば、個別のインタフェース用プログラムを開発しなくでも、つながるようになるからだ。
サービス化に突き進むERPベンダー
ERPパッケージのサービス化が叫ばれ始めたのは3年ほど前である。その後の3年間で,ベンダーの方針は一変した。
2004年に,ERPパッケージ世界1位の独SAPが「ベストプラクティス」という言葉を使うのを止め,「Enterprise SOA」というサービス化を前提とした考え方を打ち出したのが発端である。Enterprise SOAは,SOA(サービス指向アーキテクチャ)を全面的に取り入れて,ERPパッケージのあり方を見直したものだ。
Enterprise SOAに沿ったERPパッケージの特徴は,様々な機能を「サービス」として提供できるようになることだ。ユーザー企業は,サービスを組み合わせて,自社の 業務に合ったシステムを構築できる,というのがSAPの説明だった。SAPはこの時,「2007年にEnterprise SOAは完成する」と宣言した。
SAPの発表から約1年経った2005年1月。今度は世界第2位のERPベンダーである米オラクルが,新ERPパッケージの開発プロジェクト 「Project Fusion」を発表した。オラクルはこの時,Project Fusionで開発する新世代のERPパッケージ「Oracle Fusion Applications」を,完全にサービス化されたパッケージ・ソフトにすることを明らかにした。第一弾の製品は2008年に出荷される予定だ。
オラクルの考えもSAPと同じだ。Oralce Fusion Applicationsが提供するサービスをパッケージとして扱えるようになれば,ユーザー企業は好きなサービスを組み合わせて,自社に最適なシステム を構築できるようになる。オラクルは,買収を通じて,10社を超える企業のアプリケーション・パッケージを手に入れている。これらの製品相互の統合を進め るためにも,ERPパッケージのサービス化が不可欠と考えたようだ。
他のベンダーもSAP,オラクルの後を追い始めた。外資系では,世界3位の米インフォア・グローバル・ソリューションズがすでに自社製品のサービ ス化に着手。2007年6月に,ERPパッケージ「Dynamics AX」を日本市場に投入した米マイクロソフトも,米国ではサービス化に向けた戦略を発表済みだ。この波は国産製品にもやってきている。2007年5月に は,富士通が自社製品「GLOVIA」をサービス化すると発表した。
ERPパッケージをサービス化して利用するためには,専用のミドルウエア群が必要になる。SAPであればNetWeaverであり,オラクルであれば Oracle Fusion Middlewareである。サービスとしてERPを導入するためには,少なくともこれらのミドルウエアに習熟しなければならない。